曲線上にない点から曲線に接線を引く ── 「接点」が分からない状況で接線を求めるには、接点を文字でおいて条件を立てる必要があります。
入試頻出のこのテーマを、解法の本質から理解しましょう。
前回は「曲線上の点」が接点として与えられていました。しかし、「ある点を通る接線を求めよ」という問題では、その点が曲線上にあるとは限りません。
曲線外の点 $(p, q)$ から曲線 $y = f(x)$ に接線を引くとき、接点は未知です。そこで接点の $x$ 座標を $t$ とおくことで、問題を「$t$ の方程式を解く問題」に帰着させます。
$$\text{接点} = (t, f(t)) \quad \to \quad \text{接線の方程式を立てる} \quad \to \quad \text{通過点の条件から } t \text{ を決定}$$
これが「曲線外からの接線」の定石です。
Step 1:接点の $x$ 座標を $t$ とおく → 接点は $(t, f(t))$
Step 2:接線の傾きは $f'(t)$
Step 3:接線の方程式を立てる:$y - f(t) = f'(t)(x - t)$
Step 4:接線が点 $(p, q)$ を通る条件を代入:$q - f(t) = f'(t)(p - t)$
Step 5:$t$ の方程式を解いて、接線の方程式を確定する
最も多いミスは、通過点 $(p, q)$ を接点だと思い込むことです。
✗ 誤り:通過点 $(p, q)$ を直接 $a$ に代入して $f'(p)$ を傾きにする
✓ 正しい:接点 $(t, f(t))$ を文字でおいて、接線が $(p, q)$ を通る条件から $t$ を求める
特に $(p, q)$ が曲線上の点であっても、「$x = p$ での接線」とは限りません。
問:点 $(0, -1)$ から曲線 $y = x^2$ に引いた接線の方程式を求めよ。
接点を $(t, t^2)$ とおくと、接線は $y - t^2 = 2t(x - t)$ すなわち $y = 2tx - t^2$
$(0, -1)$ を通る条件:$-1 = -t^2$ より $t^2 = 1$、$t = \pm 1$
$t = 1$:$y = 2x - 1$、$t = -1$:$y = -2x - 1$
答え:$y = 2x - 1$ と $y = -2x - 1$ の2本
問:点 $(0, 2)$ から曲線 $y = x^3$ に引いた接線の方程式を求めよ。
接点を $(t, t^3)$ とおくと、接線は $y - t^3 = 3t^2(x - t)$ すなわち $y = 3t^2 x - 2t^3$
$(0, 2)$ を通る条件:$2 = -2t^3$ より $t^3 = -1$、$t = -1$
$t = -1$:$y = 3x + 2$
答え:$y = 3x + 2$ の1本
通過点の条件から得られる $t$ の方程式の実数解の個数が、そのまま接線の本数になります。
例1では $t^2 = 1$ の解が $2$ 個なので接線は $2$ 本。例2では $t^3 = -1$ の実数解が $1$ 個なので接線は $1$ 本です。
点 $(p, q)$ から $y = x^2$ に引く接線の本数を調べましょう。
接点 $(t, t^2)$ での接線 $y = 2tx - t^2$ が $(p, q)$ を通る条件:
$$q = 2tp - t^2 \quad \Longleftrightarrow \quad t^2 - 2pt + q = 0$$
判別式 $D = 4p^2 - 4q = 4(p^2 - q)$ より
| 条件 | 接線の本数 | 点の位置 |
|---|---|---|
| $q < p^2$($D > 0$) | 2本 | 放物線の外側 |
| $q = p^2$($D = 0$) | 1本 | 放物線上 |
| $q > p^2$($D < 0$) | 0本 | 放物線の内側 |
$y = x^3$ の場合、$t$ の方程式は3次方程式になるため、点の位置によって接線は 1本または3本 になります(2本になる境界の場合もある)。
接線の本数が変化する境界線を包絡線(envelope)と呼びます。放物線 $y = x^2$ の場合、包絡線は放物線自身です(放物線上の点からは接線がちょうど1本引ける)。
一般に、曲線の接線族のパラメータ $t$ による方程式 $F(x, y, t) = 0$ と $\dfrac{\partial F}{\partial t} = 0$ を連立して $t$ を消去すると包絡線が得られます。
接線は接点で曲線に「接する」だけでなく、別の点で曲線と「交わる」こともあります。
例:$y = x^3 - 3x$ の $x = 1$ での接線 $y = 0$ と曲線の交点
$x^3 - 3x = 0$ より $x(x-\sqrt{3})(x+\sqrt{3}) = 0$。$x = 0, \pm\sqrt{3}$ が交点
$x = 1$ は接点($f(1) = -2 \neq 0$ なのでこの例は不適切。修正します)。
例(修正):$y = x^3$ の原点での接線は $y = 0$($x$ 軸)。$x^3 = 0$ の解は $x = 0$ のみ(3重解)なので、接線は原点でのみ曲線と会います。
接線と曲線の連立方程式 $f(x) = f'(t)(x-t)+f(t)$ において、$x = t$ は少なくとも重解になります。これが「接する」ことの代数的な意味です。
$$f(x) - \{f'(t)(x-t)+f(t)\} = (x-t)^2 \cdot g(x)$$
$g(x) = 0$ の解が「接線と曲線のもう一つの交点」を与えます。
$x = 1$ での接線:$y = 3x - 2$
$x^3 - (3x - 2) = x^3 - 3x + 2 = (x-1)^2(x+2) = 0$
$x = 1$(重解 = 接点)と $x = -2$(単解 = もう一つの交点)
Q1. 点 $(1, -3)$ から曲線 $y = x^2$ に接線を引くとき、接点の $x$ 座標を $t$ として条件式を立てよ。
Q2. Q1 の方程式を解いて接線の方程式を求めよ。
Q3. 点 $(0, 0)$ から $y = x^2 + 1$ に接線を引けるか。
Q4. 放物線 $y = x^2$ の内側($q > p^2$)にある点から接線は引けるか。
Q5. $y = x^3$ の $x = 1$ での接線 $y = 3x - 2$ と曲線のもう一つの交点を求めよ。
点 $(2, 0)$ から曲線 $y = x^2 - 2x$ に引いた接線の方程式を求めよ。
接点 $(t, t^2-2t)$、$f'(t)=2t-2$ より接線:$y-(t^2-2t)=(2t-2)(x-t)$
$y = (2t-2)x - t^2$
$(2, 0)$を代入:$0 = 2(2t-2) - t^2 = -t^2+4t-4 = -(t-2)^2$
$t = 2$(重解)。$f(2) = 0$、$(2,0)$ は曲線上の点。接線は $y = 2(x-2)$ すなわち $y = 2x - 4$
方針:問題の条件を整理し、段階的に計算を進める。
方針:問題の条件を整理し、段階的に計算を進める。