対数には3つの強力な計算法則があります。積の対数は和に、商の対数は差に、べき乗の対数は定数倍に変換できるのです。
これらの法則は「指数法則の翻訳」にすぎません。なぜそうなるのかを理解すれば、丸暗記は不要です。
対数の計算法則を学ぶ前に、対数の定義を確認しておきましょう。$a > 0$、$a \neq 1$、$M > 0$ のとき、
$$a^p = M \iff p = \log_a M$$
つまり「$a$ を何乗したら $M$ になるか」を表す数が $\log_a M$ です。この定義から、すぐにわかる基本的な性質があります。
$$\log_a 1 = 0, \quad \log_a a = 1$$
$a^0 = 1$ だから $\log_a 1 = 0$、$a^1 = a$ だから $\log_a a = 1$ です。
対数には次の3つの計算法則があり、これらが対数計算の核心です。
$a > 0$、$a \neq 1$、$M > 0$、$N > 0$、$k$ は実数とする。
$$\textbf{(1)} \quad \log_a MN = \log_a M + \log_a N \quad \text{(積の対数 = 対数の和)}$$
$$\textbf{(2)} \quad \log_a \frac{M}{N} = \log_a M - \log_a N \quad \text{(商の対数 = 対数の差)}$$
$$\textbf{(3)} \quad \log_a M^k = k \log_a M \quad \text{(べき乗の対数 = 対数の定数倍)}$$
3つの法則はすべて「指数法則の翻訳」です。指数法則を対数の言葉で書き直しただけなのです。
なぜ対数にはこのような法則があるのでしょうか? 答えは単純です。対数は指数のことだからです。
指数法則には $a^p \cdot a^q = a^{p+q}$(積 → 指数の和)、$a^p \div a^q = a^{p-q}$(商 → 指数の差)、$(a^p)^k = a^{pk}$(べき → 指数の積)があります。
対数 $\log_a M$ は「$a$ を何乗すると $M$ か」という指数そのものです。だから指数法則がそのまま対数の法則として現れるのです。
| 指数法則 | 対数の計算法則 | 変換の意味 |
|---|---|---|
| $a^p \cdot a^q = a^{p+q}$ | $\log_a MN = \log_a M + \log_a N$ | 積 → 和 |
| $a^p \div a^q = a^{p-q}$ | $\log_a \dfrac{M}{N} = \log_a M - \log_a N$ | 商 → 差 |
| $(a^p)^k = a^{pk}$ | $\log_a M^k = k \log_a M$ | べき → 定数倍 |
17世紀、天文学者たちは惑星の軌道計算で巨大な数の掛け算に苦しんでいました。ジョン・ネイピアは約20年かけて対数表を作り上げました。対数表を使えば、掛け算を足し算に変換できるので、計算が格段に速くなります。これは電卓が発明されるまでの約350年間、科学計算の最重要ツールでした。
対数の計算法則こそが、対数が発明された根本的な理由なのです。
$\log_a MN = \log_a M + \log_a N$ を証明しましょう。この証明を通して「なぜ成り立つか」が見えてきます。
$\log_a M = p$、$\log_a N = q$ とおくと、対数の定義から
$$a^p = M, \quad a^q = N$$
$M$ と $N$ の積を作ると、
$$MN = a^p \cdot a^q = a^{p+q}$$
最後の等号は指数法則 $a^p \cdot a^q = a^{p+q}$ による。
$MN = a^{p+q}$ を対数の定義で書き直すと、
$$\log_a MN = p + q = \log_a M + \log_a N$$
証明で起きていることは次の3ステップです。
Step 1:対数を指数の形に翻訳する($\log_a M = p$ → $a^p = M$)
Step 2:指数法則を適用する($a^p \cdot a^q = a^{p+q}$)
Step 3:結果を対数の形に戻す($a^{p+q} = MN$ → $\log_a MN = p + q$)
つまり「対数 → 指数 → 指数法則を使う → 対数に戻す」というパターンです。他の2つの法則も全く同じパターンで証明できます。
$\log_2 8 + \log_2 4$ を計算してみましょう。
$$\log_2 8 + \log_2 4 = \log_2 (8 \times 4) = \log_2 32 = 5$$
確認:$\log_2 8 = 3$($2^3 = 8$)、$\log_2 4 = 2$($2^2 = 4$)なので、$3 + 2 = 5$。確かに一致します。
この法則は3つ以上の積にも拡張できます。
$$\log_a MNL = \log_a M + \log_a N + \log_a L$$
これは法則を2回適用すれば得られます。$\log_a MNL = \log_a (MN) \cdot L = \log_a (MN) + \log_a L = \log_a M + \log_a N + \log_a L$。
$\log_a M + \log_a N = \log_a MN$(積の対数は和)ですが、逆に「和の対数」は分解できません。
✗ 誤り:$\log_a (M + N) = \log_a M + \log_a N$
✓ 正しい:$\log_a (M + N)$ はこれ以上分解できない
$\log$ の中が「かけ算」なら分解でき、「足し算」なら分解できません。確認:$\log_2 (4 + 4) = \log_2 8 = 3$ ですが、$\log_2 4 + \log_2 4 = 2 + 2 = 4$ で一致しません。
$\log_a M = p$、$\log_a N = q$ とおくと、$a^p = M$、$a^q = N$ です。
$M$ を $N$ で割ると、
$$\frac{M}{N} = \frac{a^p}{a^q} = a^{p-q}$$
対数の定義により、
$$\log_a \frac{M}{N} = p - q = \log_a M - \log_a N$$
$\log_3 54 - \log_3 2$ を計算してみましょう。
$$\log_3 54 - \log_3 2 = \log_3 \frac{54}{2} = \log_3 27 = 3$$
このように、商の法則を使うと真数を簡単にしてから計算できます。
商の法則で $M = 1$ とすると、便利な公式が得られます。
$$\log_a \frac{1}{N} = \log_a 1 - \log_a N = 0 - \log_a N = -\log_a N$$
$$\log_a \frac{1}{N} = -\log_a N$$
これは $\frac{1}{N} = N^{-1}$ なので、べき乗の法則 $\log_a N^{-1} = -\log_a N$ からも導けます。
積の場合と同じ注意が必要です。
✗ 誤り:$\log_a (M - N) = \log_a M - \log_a N$
✓ 正しい:$\log_a \dfrac{M}{N} = \log_a M - \log_a N$
$\log$ の中が「割り算」のときだけ、外の「引き算」に変換できます。$\log$ の中が「引き算」のときは分解できません。
電卓が普及する以前、科学者や技術者は「対数表」を使って計算していました。$M \times N$ を計算するには、(1) 表から $\log M$ と $\log N$ を引く、(2) それらを足す、(3) 表で逆引きして答えを得る、という手順です。掛け算が足し算に、割り算が引き算に変わるので、膨大な桁数の計算も手作業で可能でした。
$\log_a M = p$ とおくと、$a^p = M$ です。
両辺を $k$ 乗すると、
$$M^k = (a^p)^k = a^{pk}$$
対数の定義により、
$$\log_a M^k = pk = k \log_a M$$
$\log_2 8^5$ を計算してみましょう。
$$\log_2 8^5 = 5 \log_2 8 = 5 \times 3 = 15$$
確認:$8^5 = (2^3)^5 = 2^{15}$ なので $\log_2 2^{15} = 15$。一致します。
$k$ は実数なので、分数でも使えます。特に $k = \frac{1}{n}$ のとき、$M^{1/n} = \sqrt[n]{M}$ ですから、
$$\log_a \sqrt[n]{M} = \log_a M^{1/n} = \frac{1}{n} \log_a M$$
例えば、$\log_3 \sqrt{27} = \frac{1}{2} \log_3 27 = \frac{1}{2} \times 3 = \frac{3}{2}$ です。
$$\log_a \sqrt[n]{M} = \frac{1}{n} \log_a M$$
$\sqrt[n]{M} = M^{1/n}$ をべき乗の法則に代入するだけです。
$\log_a M^k = k \log_a M$ は $M > 0$ のときだけ成り立ちます。
✗ 危険:$\log_a x^2 = 2\log_a x$($x$ が負のとき左辺は定義できるが右辺は定義できない)
✓ 安全:$x > 0$ のとき $\log_a x^2 = 2\log_a x$
$x < 0$ のときは $x^2 > 0$ なので $\log_a x^2$ は定義できますが、$\log_a x$ は定義できません。正確に書くと $\log_a x^2 = 2\log_a |x|$($x \neq 0$)です。対数方程式を解くときに特に注意が必要です。
対数の定義 $a^p = M$(ただし $p = \log_a M$)から、次の等式が直ちに従います。
$$a^{\log_a M} = M$$
これは「$a$ を $\log_a M$ 乗すると $M$ に戻る」ということです。対数をとる操作と、底のべき乗にする操作は逆操作の関係にあります。
$f(x) = a^x$ と $g(x) = \log_a x$ は互いに逆関数です。$f(g(x)) = a^{\log_a x} = x$、$g(f(x)) = \log_a(a^x) = x$ が成り立ちます。大学数学では、この「逆関数」の考え方が微分・積分の重要な道具になります。例えば $(\log x)' = \frac{1}{x}$ という微分公式は、$e^x$ の逆関数が $\log x$ であることから導かれます。
3つの法則は「2つの方向」に使えます。
問題によって、どちらの方向に変形するかを見極めることが大切です。
$\log_2 24$ を $\log_2 2$ と $\log_2 3$ で表してみましょう。
$$\log_2 24 = \log_2 (2^3 \times 3) = \log_2 2^3 + \log_2 3 = 3\log_2 2 + \log_2 3 = 3 + \log_2 3$$
素因数分解で $24 = 2^3 \times 3$ とし、積の法則で分け、べき乗の法則で指数を前に出しました。
$\log_3 12 + \log_3 \frac{3}{4}$ を計算してみましょう。
$$\log_3 12 + \log_3 \frac{3}{4} = \log_3 \left(12 \times \frac{3}{4}\right) = \log_3 9 = 2$$
積の法則でまとめたあと、真数が $9 = 3^2$ と簡単になりました。
底が異なる対数が混じった計算では、底の変換公式を使って底をそろえてから、計算法則を適用します。
$a$、$b$、$c$ が正の数で、$a \neq 1$、$c \neq 1$ のとき、
$$\log_a b = \frac{\log_c b}{\log_c a}$$
底 $a$ を別の底 $c$ に変換する公式です。$c = 10$ や $c = e$ にすると常用対数・自然対数で統一できます。
例えば $\log_4 8$ は、底を $2$ に変換すると簡単になります。
$$\log_4 8 = \frac{\log_2 8}{\log_2 4} = \frac{3}{2}$$
積や商の法則は底が同じ対数どうしでないと使えません。
✗ 誤り:$\log_2 3 + \log_3 5 = \log_2 15$(底が $2$ と $3$ で異なる!)
✓ 正しい:底の変換公式で底をそろえてから計算する
底が異なる対数の加減を見たら、まず底の変換公式を使いましょう。
底の変換公式を使うと、次の便利な公式が導けます。
(i) 底と真数の交換
$$\log_a b = \frac{1}{\log_b a}$$
底の変換公式で $c = b$ とすると、$\log_a b = \frac{\log_b b}{\log_b a} = \frac{1}{\log_b a}$ です。
(ii) 連鎖公式
$$\log_a b \times \log_b c = \log_a c$$
底を $a$ に統一すると、$\log_a b \times \frac{\log_a c}{\log_a b} = \log_a c$ と確かめられます。
べき乗の法則は真数のべき乗について使うものです。底のべき乗や、対数全体のべき乗とは異なります。
✗ 誤り:$(\log_2 3)^2 = 2\log_2 3$(これは対数のべき乗であり、真数のべき乗ではない)
✓ 正しい:$\log_2 3^2 = 2\log_2 3$(真数 $3$ を2乗)
$(\log_2 3)^2$ は $\log_2 3$ という数の2乗であり、$\log_2 9$ とは無関係です。
コンピュータサイエンスでは、情報量を $\log_2$ で測ります。8ビットのデータは $2^8 = 256$ 通りの状態を表せますが、その情報量は $\log_2 256 = 8$ ビットです。データを2倍に複製すると情報量は $\log_2 (256 \times 256) = \log_2 256 + \log_2 256 = 16$ ビットになります。積の対数が和になる法則は、情報量が「足し合わせられる」性質に直結しているのです。
Q1. $\log_5 20 + \log_5 \dfrac{5}{4}$ の値を求めよ。
Q2. $\log_3 36 - \log_3 4$ の値を求めよ。
Q3. $\log_2 \sqrt[3]{16}$ の値を求めよ。
Q4. $\log_2 48$ を $\log_2 3$ を用いて表せ。
Q5. $\log_9 8$ の値を $\log_3 2$ を用いて表せ。
次の計算をせよ。
(1) $\log_2 6 + \log_2 \dfrac{8}{3}$
(2) $2\log_3 6 - \log_3 4$
(3) $\log_4 2 + \log_4 32$
(1) $\log_2 6 + \log_2 \dfrac{8}{3} = \log_2 \left(6 \times \dfrac{8}{3}\right) = \log_2 16 = 4$
(2) $2\log_3 6 - \log_3 4 = \log_3 6^2 - \log_3 4 = \log_3 \dfrac{36}{4} = \log_3 9 = 2$
(3) $\log_4 2 + \log_4 32 = \log_4 (2 \times 32) = \log_4 64 = \log_4 4^3 = 3$
方針:問題の条件を整理し、段階的に計算を進める。
方針:問題の条件を整理し、段階的に計算を進める。