第4章 三角関数

sinのグラフと変換
─ 正弦波を自在に操る4つのパラメータ

「$y = \sin\theta$ のグラフはどんな形?」「振幅や周期を変えるには?」── 三角関数のグラフは波の形をしており、たった4つのパラメータで自在に変換できます。
基本グラフの特徴を押さえたうえで、振幅・周期・位相・上下移動の変換を順に理解しましょう。

1$y = \sin\theta$ の基本グラフ

三角関数のグラフを学ぶ第一歩は、$y = \sin\theta$ の形を正確に把握することです。単位円上の点の $y$ 座標が $\sin\theta$ であることを思い出しながら、横軸に $\theta$、縦軸に $y$ をとってグラフを描きましょう。

基本グラフの特徴

$y = \sin\theta$ のグラフには次のような特徴があります。

  • 形状:なめらかな波形(正弦波、サインカーブ)
  • 周期:$2\pi$($\theta$ が $2\pi$ 進むと同じ形が繰り返される)
  • 振幅:$1$(波の山の高さ、谷の深さがともに $1$)
  • 値域:$-1 \leq y \leq 1$
  • 原点を通る:$\sin 0 = 0$

主要な点の座標

1周期分($0 \leq \theta \leq 2\pi$)の主要な点を確認しましょう。

$\theta$ $0$ $\dfrac{\pi}{2}$ $\pi$ $\dfrac{3\pi}{2}$ $2\pi$
$\sin\theta$ $0$ $1$ $0$ $-1$ $0$
状態 原点 最大値 零点 最小値 零点
💡 ここが本質:正弦波の4つの特徴量

$y = a\sin(b\theta + c) + d$ は4つのパラメータで正弦波の「振幅周期位相基準線」を制御します。これから1つずつ順に学んでいきますが、最終的にはこの4つのパラメータを自在に読み取れるようになることがゴールです。

グラフの対称性

$\sin(-\theta) = -\sin\theta$ なので、$y = \sin\theta$ のグラフは原点対称(奇関数)です。つまり、原点に関して点対称な形をしています。

2$y = a\sin\theta$(振幅の変換)

$a$ の意味

$y = a\sin\theta$ において、定数 $a$ はグラフの縦方向の伸縮を制御します。$\sin\theta$ の値($-1$ から $1$)を $a$ 倍するので、グラフの山と谷の高さが変わります。

📐 振幅の公式

$$y = a\sin\theta \quad \text{の振幅} = |a|$$

値域は $-|a| \leq y \leq |a|$ となる。

振幅とは、基準線($y = 0$)から山の頂上(または谷の底)までの距離です。最大値と最小値の差の半分とも言えます。

$a > 0$ の場合

$a > 0$ のとき、$y = a\sin\theta$ は $y = \sin\theta$ を縦方向に $a$ 倍したグラフです。

  • $a > 1$ のとき:グラフが縦に引き伸ばされる(振幅が大きくなる)
  • $0 < a < 1$ のとき:グラフが縦に縮む(振幅が小さくなる)
  • $a = 1$ のとき:基本グラフそのもの

$a < 0$ の場合

$a < 0$ のとき、$y = a\sin\theta$ は $y = |a|\sin\theta$ のグラフを $\theta$ 軸に関して上下反転(折り返し)したものです。$\sin\theta$ の値に負の数をかけるので、山と谷が入れ替わります。

例えば $y = -\sin\theta$ は、$y = \sin\theta$ のグラフを $\theta$ 軸で折り返した形になります。

具体例

例:$y = 3\sin\theta$ → 振幅 $3$、値域 $[-3, 3]$

例:$y = -2\sin\theta$ → 振幅 $|-2| = 2$、値域 $[-2, 2]$、上下反転

3$y = \sin(b\theta)$(周期の変換)

$b$ の意味

$y = \sin(b\theta)$ において、定数 $b$ はグラフの横方向の伸縮を制御します。$\theta$ に $b$ をかけることで、波が繰り返される速さが変わります。

📐 周期の公式

$$y = \sin(b\theta) \quad \text{の周期} = \frac{2\pi}{|b|}$$

$|b| > 1$ のとき周期は $2\pi$ より短くなり(波が密になる)、$0 < |b| < 1$ のとき周期は $2\pi$ より長くなる(波が疎になる)。

▷ なぜ周期が $\dfrac{2\pi}{|b|}$ になるのか

$y = \sin\theta$ の周期は $2\pi$ です。つまり $\sin(\theta + 2\pi) = \sin\theta$ が成り立ちます。

$y = \sin(b\theta)$ が1周期を完了するのは、$b\theta$ の値が $2\pi$ だけ進んだときです。

$b\theta$ が $2\pi$ 進むために $\theta$ がどれだけ進めばよいかを求めると、

$$b \cdot T = 2\pi \quad \Longrightarrow \quad T = \frac{2\pi}{b}$$

$b < 0$ の場合も考慮すると、周期は $T = \dfrac{2\pi}{|b|}$ です。

つまり、$\theta$ を $b$ 倍に「加速」するので、1周にかかる $\theta$ の幅が $\dfrac{1}{|b|}$ 倍に「圧縮」されるのです。

$b > 0$ の場合

  • $b > 1$:波が横に圧縮される(周期が短くなる)
  • $0 < b < 1$:波が横に引き伸ばされる(周期が長くなる)

例:$y = \sin(2\theta)$ → 周期 $= \dfrac{2\pi}{2} = \pi$(通常の半分の周期)

例:$y = \sin\!\left(\dfrac{1}{2}\theta\right)$ → 周期 $= \dfrac{2\pi}{1/2} = 4\pi$(通常の2倍の周期)

$b < 0$ の場合

$b < 0$ のとき、$\sin(b\theta) = \sin(-|b|\theta) = -\sin(|b|\theta)$ となります。つまり、周期は $\dfrac{2\pi}{|b|}$ で、さらにグラフが上下反転します。

4$y = \sin(\theta - c)$(位相の平行移動)

$c$ の意味

$y = \sin(\theta - c)$ は、$y = \sin\theta$ のグラフを $\theta$ 軸方向(横方向)に $c$ だけ平行移動したものです。この $c$ を位相(位相のずれ)と呼びます。

  • $c > 0$:グラフが正の方向(右)に $c$ だけ移動
  • $c < 0$:グラフが負の方向(左)に $|c|$ だけ移動

これは関数のグラフの平行移動の一般原則「$y = f(x - c)$ は $y = f(x)$ を $x$ 軸方向に $+c$ だけ平行移動」と同じです。

具体例

例:$y = \sin\!\left(\theta - \dfrac{\pi}{3}\right)$ → $y = \sin\theta$ を右に $\dfrac{\pi}{3}$ 移動

例:$y = \sin\!\left(\theta + \dfrac{\pi}{4}\right) = \sin\!\left(\theta - \left(-\dfrac{\pi}{4}\right)\right)$ → $y = \sin\theta$ を左に $\dfrac{\pi}{4}$ 移動

⚠️ 落とし穴:$b$ と $c$ が同時にあるとき

$y = \sin(2\theta - \dfrac{\pi}{3})$ の位相を読み取るとき、「$\dfrac{\pi}{3}$ だけ右に移動」と考えるのは誤りです。

✗ 誤り:位相は $\dfrac{\pi}{3}$($\dfrac{\pi}{3}$ だけ右に移動)

✓ 正しい:$\sin\!\left(2\!\left(\theta - \dfrac{\pi}{6}\right)\right)$ と変形してから読み取る → 位相は $\dfrac{\pi}{6}$

$y = \sin(b\theta + c)$ の形では、必ず $\sin\!\left(b\!\left(\theta - \left(-\dfrac{c}{b}\right)\right)\right)$ と $b$ でくくってから平行移動量 $-\dfrac{c}{b}$ を読み取りましょう。

位相の平行移動の確認

平行移動量を確認するには、「もとのグラフで $\theta = 0$ だった点がどこに移動するか」を考えるとわかりやすいです。$y = \sin(\theta - c)$ で $y = 0$ となる始点は $\theta = c$ なので、確かに右に $c$ ずれています。

5$y = a\sin(b\theta + c) + d$ の一般形

4つのパラメータの意味

最も一般的な正弦関数のグラフ $y = a\sin(b\theta + c) + d$ には、4つのパラメータがあります。それぞれの役割をまとめましょう。

📐 一般形の各パラメータ

$$y = a\sin(b\theta + c) + d$$

振幅:$|a|$ ─ 波の高さを制御

周期:$\dfrac{2\pi}{|b|}$ ─ 1回の波の長さを制御

位相(横の平行移動量):$-\dfrac{c}{b}$ ─ 波の横方向のずれを制御

基準線(縦の平行移動量):$d$ ─ 波の上下方向のずれを制御

値域は $d - |a| \leq y \leq d + |a|$。最大値 $d + |a|$、最小値 $d - |a|$ です。

グラフの描き方の手順

$y = a\sin(b\theta + c) + d$ のグラフを描くには、次の手順に従います。

  1. $b$ でくくる:$y = a\sin\!\left(b\!\left(\theta + \dfrac{c}{b}\right)\right) + d$ と変形する
  2. 周期を求める:$T = \dfrac{2\pi}{|b|}$
  3. 振幅を確認する:振幅 $= |a|$、$a < 0$ なら上下反転
  4. 基準線を引く:$y = d$ の水平線を引く
  5. 始点を定める:平行移動量 $-\dfrac{c}{b}$ の位置から波を開始
  6. 主要な5点を打つ:始点から $\dfrac{T}{4}$ ずつ進んで、零点→最大→零点→最小→零点をプロット

具体例

例題:$y = 2\sin\!\left(3\theta - \dfrac{\pi}{2}\right) + 1$ のグラフの特徴を求めよ。

解:まず $b = 3$ でくくると、

$$y = 2\sin\!\left(3\!\left(\theta - \frac{\pi}{6}\right)\right) + 1$$

  • 振幅:$|2| = 2$
  • 周期:$\dfrac{2\pi}{|3|} = \dfrac{2\pi}{3}$
  • 位相(横の平行移動):右に $\dfrac{\pi}{6}$
  • 基準線:$y = 1$(上に $1$ 移動)
  • 値域:$1 - 2 \leq y \leq 1 + 2$ すなわち $-1 \leq y \leq 3$

パラメータの変換の一覧表

パラメータ 役割 グラフへの影響
$a$ 振幅 $|a|$ 縦方向の伸縮。$a < 0$ で上下反転
$b$ 周期 $\dfrac{2\pi}{|b|}$ 横方向の伸縮。$|b|$ 大 → 波が密
$c$ 位相 $-\dfrac{c}{b}$ 横方向の平行移動
$d$ 基準線 $y = d$ 縦方向の平行移動
🔬 深掘りTips:物理との関連

音波や電磁波は正弦波で表されます。振幅は音の大きさ(音量)に、周波数(周期の逆数 $\dfrac{|b|}{2\pi}$)は音の高さ(ピッチ)に対応します。位相は波のタイミングのずれを表し、$d$ は直流成分(オフセット)に相当します。

物理の波動の授業で $y = A\sin(\omega t + \varphi)$ という式を見たら、$A$ が振幅、$\omega$ が角振動数($b$ に対応)、$\varphi$ が初期位相($c$ に対応)です。

📋まとめ

  • 基本グラフ:$y = \sin\theta$ は周期 $2\pi$、振幅 $1$、値域 $[-1, 1]$ の正弦波。原点を通り、原点対称(奇関数)。
  • 振幅の変換:$y = a\sin\theta$ の振幅は $|a|$。$a < 0$ のときはグラフが上下反転する。
  • 周期の変換:$y = \sin(b\theta)$ の周期は $\dfrac{2\pi}{|b|}$。$|b|$ が大きいほど波が密になる。
  • 位相の平行移動:$y = \sin(\theta - c)$ は $y = \sin\theta$ を右に $c$ 移動。$b\theta + c$ の形では $b$ でくくってから読み取ること。
  • 一般形:$y = a\sin(b\theta + c) + d$ で振幅 $|a|$、周期 $\dfrac{2\pi}{|b|}$、位相 $-\dfrac{c}{b}$、基準線 $y = d$。この4要素でグラフが決まる。

✅ 確認テスト

Q1. $y = \sin\theta$ のグラフの周期、振幅、値域をそれぞれ答えよ。

▶ クリックして解答を表示 周期 $2\pi$、振幅 $1$、値域 $-1 \leq y \leq 1$

Q2. $y = -3\sin\theta$ の振幅と値域を求めよ。

▶ クリックして解答を表示 振幅 $|-3| = 3$、値域 $-3 \leq y \leq 3$

Q3. $y = \sin(3\theta)$ の周期を求めよ。

▶ クリックして解答を表示 周期 $= \dfrac{2\pi}{|3|} = \dfrac{2\pi}{3}$

Q4. $y = \sin\!\left(\theta + \dfrac{\pi}{6}\right)$ は $y = \sin\theta$ をどの方向にどれだけ平行移動したものか。

▶ クリックして解答を表示 $\sin\!\left(\theta - \left(-\dfrac{\pi}{6}\right)\right)$ なので、左に $\dfrac{\pi}{6}$ 平行移動したもの。

Q5. $y = 2\sin\!\left(4\theta - \pi\right) - 3$ の振幅・周期・位相(横の移動量)・基準線を求めよ。

▶ クリックして解答を表示 $2\sin\!\left(4\!\left(\theta - \dfrac{\pi}{4}\right)\right) - 3$ と変形する。振幅 $2$、周期 $\dfrac{2\pi}{4} = \dfrac{\pi}{2}$、右に $\dfrac{\pi}{4}$ 移動、基準線 $y = -3$。

📝入試問題演習

問題 1 A 基礎

次の各関数の振幅・周期・値域を求めよ。

(1) $y = 4\sin\theta$

(2) $y = \sin(5\theta)$

(3) $y = -2\sin\!\left(\dfrac{1}{3}\theta\right)$

▶ クリックして解答を表示
解答

(1) 振幅 $4$、周期 $2\pi$、値域 $-4 \leq y \leq 4$

(2) 振幅 $1$、周期 $\dfrac{2\pi}{5}$、値域 $-1 \leq y \leq 1$

(3) 振幅 $|-2| = 2$、周期 $\dfrac{2\pi}{1/3} = 6\pi$、値域 $-2 \leq y \leq 2$

解説

方針:問題の条件を整理し、段階的に計算を進める。

解説

方針:問題の条件を整理し、段階的に計算を進める。