「直線 $\ell$ に関して点 $\mathrm{P}$ と対称な点 $\mathrm{P'}$ の座標は?」── 対称点の問題は、垂直二等分線の条件を方程式に翻訳する典型的な問題です。
軸に関する対称、一般の直線に関する対称、そして最短経路問題への応用まで、体系的に学びましょう。
ある点 $\mathrm{P}$ を直線 $\ell$ に関して「折り返した」点を、$\ell$ に関する $\mathrm{P}$ の対称点(reflection point)といいます。対称点 $\mathrm{P'}$ は次の2つの条件を同時に満たす点として定義されます。
点 $\mathrm{P}$ の直線 $\ell$ に関する対称点 $\mathrm{P'}$ とは、次の2条件を満たす点です。
つまり、直線 $\ell$ は線分 $\mathrm{PP'}$ の垂直二等分線です。
対称点を直感的に理解するには、「紙を直線 $\ell$ に沿って折る」とイメージしましょう。折ったとき、点 $\mathrm{P}$ がぴったり重なる位置が対称点 $\mathrm{P'}$ です。
折り目(直線 $\ell$)は、$\mathrm{P}$ と $\mathrm{P'}$ を結ぶ線分のちょうど真ん中を垂直に横切ります。これが「中点が $\ell$ 上」かつ「$\mathrm{PP'} \perp \ell$」という2条件の幾何学的な意味です。
対称点 $\mathrm{P'}(a, b)$ を求めるためには、未知数が2つ($a$ と $b$)あるので、2本の方程式が必要です。
この2条件を連立方程式として解くのが基本的な手法です。
一般の直線を扱う前に、まず座標軸に関する対称点を確認しましょう。これらは公式として即座に使えるようにしておくべきです。
点 $\mathrm{P}(x, y)$ に対して、
$x$ 軸に関する対称点:$(x, y) \to (x, -y)$
$y$ 軸に関する対称点:$(x, y) \to (-x, y)$
原点に関する対称点:$(x, y) \to (-x, -y)$
直線 $y = x$ に関する対称点:$(x, y) \to (y, x)$
$x$ 軸対称は「$y$ の符号を反転」、$y$ 軸対称は「$x$ の符号を反転」、原点対称は「両方反転」、$y = x$ 対称は「$x$ と $y$ を入れ替え」。
$x$ 軸に関して点 $(a, b)$ と対称な点は $(a, -b)$ です。$x$ 座標はそのままで、$y$ 座標の符号だけが反転します。
確認:中点は $\left(a, \dfrac{b + (-b)}{2}\right) = (a, 0)$ で $x$ 軸上にあり、$\mathrm{PP'}$ は鉛直線なので $x$ 軸(水平線)に垂直です。
$y$ 軸に関して点 $(a, b)$ と対称な点は $(-a, b)$ です。$y$ 座標はそのままで、$x$ 座標の符号が反転します。
原点に関して点 $(a, b)$ と対称な点は $(-a, -b)$ です。原点対称は「点に関する対称」であり、線対称とは異なりますが、$x$ 座標・$y$ 座標ともに符号が反転します。
原点対称は、$x$ 軸対称の後に $y$ 軸対称を行った結果(またはその逆順)と同じです。
直線 $y = x$ に関して点 $(a, b)$ と対称な点は $(b, a)$ です。$x$ 座標と $y$ 座標が入れ替わります。
確認:中点は $\left(\dfrac{a + b}{2}, \dfrac{b + a}{2}\right)$ で $y = x$ 上にあり、$\mathrm{PP'}$ の傾きは $\dfrac{a - b}{b - a} = -1$ で直線 $y = x$(傾き $1$)と垂直です。
| 対称の基準 | $(x, y)$ の像 | 変化する座標 |
|---|---|---|
| $x$ 軸 | $(x, -y)$ | $y$ の符号反転 |
| $y$ 軸 | $(-x, y)$ | $x$ の符号反転 |
| 原点 | $(-x, -y)$ | 両方の符号反転 |
| 直線 $y = x$ | $(y, x)$ | $x$ と $y$ の入れ替え |
座標軸や $y = x$ 以外の一般の直線 $\ell : ax + by + c = 0$ に関する対称点は、定義に立ち戻って2つの条件を連立方程式として解きます。
点 $\mathrm{P}(p, q)$ の直線 $\ell : ax + by + c = 0$ に関する対称点を $\mathrm{P'}(s, t)$ とします。
条件1(中点条件):$\mathrm{P}$ と $\mathrm{P'}$ の中点 $\mathrm{M}\left(\dfrac{p + s}{2}, \dfrac{q + t}{2}\right)$ が直線 $\ell$ 上にある。
$$a \cdot \frac{p + s}{2} + b \cdot \frac{q + t}{2} + c = 0$$
条件2(垂直条件):直線 $\mathrm{PP'}$ が直線 $\ell$ に垂直。
直線 $\ell$ の法線ベクトルは $(a, b)$ なので、$\mathrm{PP'}$ の方向ベクトル $(s - p, t - q)$ は $(a, b)$ に平行です。
$$\frac{s - p}{a} = \frac{t - q}{b}$$
すなわち $b(s - p) = a(t - q)$、つまり $b(s - p) - a(t - q) = 0$ です。
例題:点 $\mathrm{P}(3, 1)$ の直線 $\ell : x + 2y - 1 = 0$ に関する対称点 $\mathrm{P'}(s, t)$ を求めよ。
解:
条件1(中点条件):中点 $\left(\dfrac{3 + s}{2}, \dfrac{1 + t}{2}\right)$ が $\ell$ 上にある。
$$\frac{3 + s}{2} + 2 \cdot \frac{1 + t}{2} - 1 = 0$$
$$\frac{3 + s}{2} + (1 + t) - 1 = 0$$
$$\frac{3 + s}{2} + t = 0$$
$$3 + s + 2t = 0 \quad \cdots (*)$$
条件2(垂直条件):$\ell$ の方向ベクトルは $(2, -1)$(法線ベクトル $(1, 2)$ に垂直)なので、$\mathrm{PP'}$ の傾きと $\ell$ の傾きの積が $-1$。
$\ell$ の傾きは $-\dfrac{1}{2}$ なので、$\mathrm{PP'}$ の傾きは $2$ でなければならない。
$$\frac{t - 1}{s - 3} = 2$$
$$t - 1 = 2(s - 3)$$
$$t = 2s - 5 \quad \cdots (**)$$
$(**)$ を $(*)$ に代入すると、
$$3 + s + 2(2s - 5) = 0$$
$$3 + s + 4s - 10 = 0$$
$$5s - 7 = 0 \quad \Rightarrow \quad s = \frac{7}{5}$$
$$t = 2 \cdot \frac{7}{5} - 5 = \frac{14}{5} - \frac{25}{5} = -\frac{11}{5}$$
よって、対称点は $\mathrm{P'}\left(\dfrac{7}{5}, -\dfrac{11}{5}\right)$。
対称点の問題で最も多いミスは、中点条件と垂直条件の一方しか使わないことです。
✗ 誤り:「中点が直線上」だけで対称点が決まると思い込む
✗ 誤り:「垂直に交わる」だけで対称点が決まると思い込む
✓ 正しい:中点条件と垂直条件の両方を連立して解く
未知数が2つ($s, t$)なので、方程式も2本必要です。1つの条件だけでは直線上の無限個の点が候補になってしまいます。
また、垂直条件で傾きを使うとき、符号を間違えやすいので注意しましょう。2直線が垂直 $\Leftrightarrow$ 傾きの積が $-1$ です。
直線 $\ell : ax + by + c = 0$ に関して、点 $\mathrm{P}(p, q)$ の対称点 $\mathrm{P'}(s, t)$ の一般公式を導きます。
条件2(垂直条件)より、$(s - p, t - q)$ は法線ベクトル $(a, b)$ に平行なので、実数 $k$ を用いて
$$s = p + ak, \quad t = q + bk$$
と書けます。条件1(中点条件)より、中点 $\left(\dfrac{p + s}{2}, \dfrac{q + t}{2}\right)$ が $\ell$ 上にあるので、
$$a \cdot \frac{p + (p + ak)}{2} + b \cdot \frac{q + (q + bk)}{2} + c = 0$$
$$a \cdot \frac{2p + ak}{2} + b \cdot \frac{2q + bk}{2} + c = 0$$
$$ap + \frac{a^2 k}{2} + bq + \frac{b^2 k}{2} + c = 0$$
$$(ap + bq + c) + \frac{(a^2 + b^2)k}{2} = 0$$
$$k = -\frac{2(ap + bq + c)}{a^2 + b^2}$$
したがって、
$$s = p - \frac{2a(ap + bq + c)}{a^2 + b^2}, \quad t = q - \frac{2b(ap + bq + c)}{a^2 + b^2}$$
この公式を覚える必要はありません。毎回、中点条件と垂直条件を立てて解けば十分です。
「直線 $\ell_1$ の直線 $\ell$ に関する対称な直線 $\ell_2$ を求めよ」という問題では、$\ell_1$ 上の2点を $\ell$ に関して対称移動し、その像を通る直線を求めます。
例題:直線 $\ell_1 : y = 2x + 3$ の直線 $\ell : y = x$ に関する対称な直線を求めよ。
解:直線 $y = x$ に関する対称点は $(a, b) \to (b, a)$ なので、
$\ell_1$ 上の点 $(0, 3)$ の対称点は $(3, 0)$、点 $(-1, 1)$ の対称点は $(1, -1)$ です。
2点 $(3, 0)$、$(1, -1)$ を通る直線の傾きは $\dfrac{-1 - 0}{1 - 3} = \dfrac{-1}{-2} = \dfrac{1}{2}$
$$y - 0 = \frac{1}{2}(x - 3) \quad \Rightarrow \quad y = \frac{1}{2}x - \frac{3}{2}$$
よって、求める対称な直線は $y = \dfrac{1}{2}x - \dfrac{3}{2}$。
直線 $y = x$ に関する対称移動は $x$ と $y$ を入れ替えるだけなので、$\ell_1 : y = 2x + 3$ の $x$ と $y$ を入れ替えて $x = 2y + 3$ とし、$y$ について解くと
$$y = \frac{x - 3}{2} = \frac{1}{2}x - \frac{3}{2}$$
と、同じ結果が直ちに得られます。この方法は逆関数のグラフが $y = x$ に関して元のグラフと対称であることに対応しています。
直線に関する対称移動は、線形代数では反射変換(reflection transformation)として扱われます。原点を通る直線 $y = (\tan\theta) x$ に関する反射は、行列
$$R = \begin{pmatrix} \cos 2\theta & \sin 2\theta \\ \sin 2\theta & -\cos 2\theta \end{pmatrix}$$
で表されます。例えば $\theta = 0$($x$ 軸)なら $R = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & -1 \end{pmatrix}$、$\theta = \dfrac{\pi}{4}$($y = x$)なら $R = \begin{pmatrix} 0 & 1 \\ 1 & 0 \end{pmatrix}$ となり、それぞれ $(x, y) \to (x, -y)$ と $(x, y) \to (y, x)$ に対応します。
反射行列は $R^2 = I$(2回反射すると元に戻る)、$\det R = -1$(向きが反転する)という性質を持ちます。
対称点の最も重要な応用は最短経路問題です。「直線上の点を経由する最短経路」は、対称点を利用して直線的に求めることができます。
直線 $\ell$ の同じ側に2点 $\mathrm{A}$、$\mathrm{B}$ があるとき、$\ell$ 上の点 $\mathrm{P}$ を経由する経路 $\mathrm{A} \to \mathrm{P} \to \mathrm{B}$ の長さ $\mathrm{AP} + \mathrm{PB}$ を最小にする点 $\mathrm{P}$ は次のように求まります。
なぜなら、$\mathrm{AP} = \mathrm{A'P}$(対称点との距離は等しい)なので、$\mathrm{AP} + \mathrm{PB} = \mathrm{A'P} + \mathrm{PB} \geq \mathrm{A'B}$ であり、等号は $\mathrm{A'}$、$\mathrm{P}$、$\mathrm{B}$ が一直線上にあるときに成立するからです。
例題:点 $\mathrm{A}(1, 3)$ と点 $\mathrm{B}(5, 1)$ がある。$x$ 軸上の点 $\mathrm{P}$ を経由する経路 $\mathrm{AP} + \mathrm{PB}$ が最小となる点 $\mathrm{P}$ の座標と最小値を求めよ。
解:$\mathrm{A}(1, 3)$ の $x$ 軸に関する対称点は $\mathrm{A'}(1, -3)$。
$\mathrm{A'}(1, -3)$ と $\mathrm{B}(5, 1)$ を結ぶ直線の方程式は
$$\frac{y - (-3)}{x - 1} = \frac{1 - (-3)}{5 - 1} = 1$$
$$y = x - 4$$
$x$ 軸との交点($y = 0$)は $x = 4$ なので $\mathrm{P}(4, 0)$。
最小値は $\mathrm{A'B} = \sqrt{(5 - 1)^2 + (1 - (-3))^2} = \sqrt{16 + 16} = 4\sqrt{2}$。
上の反射原理は、光の反射の法則(入射角 = 反射角)と同じ原理です。鏡(直線 $\ell$)で反射する光は、出発点と到達点を結ぶ最短経路を通ります。
この「入射角 = 反射角」の性質は、対称点を用いると自然に導かれます。対称点 $\mathrm{A'}$ と $\mathrm{B}$ を結ぶ直線が $\ell$ となす角を見ると、$\mathrm{A'P}$ と $\ell$ のなす角(反射角側)が $\mathrm{AP}$ と $\ell$ のなす角(入射角側)と等しくなっていることが確認できます。
2つの壁(直線)で反射して進む最短経路の問題は、対称点を2回取ることで解けます。
例えば、$\mathrm{A}$ から出発して直線 $\ell_1$ 上の点 $\mathrm{P}$ で反射し、次に直線 $\ell_2$ 上の点 $\mathrm{Q}$ で反射して $\mathrm{B}$ に到達する場合、
最短距離は $\mathrm{A'B'}$ です。
反射原理の本質は、折れ線の最短問題を直線の問題に帰着させることです。
対称点を取ることで、折れた経路の一部を「鏡の向こう側」に展開し、曲がった経路と同じ長さの直線に変換します。三角不等式「2辺の和 $\geq$ 第3辺」から、直線が最短であることが保証されます。
Q1. 点 $(3, -5)$ の $x$ 軸に関する対称点を求めよ。
Q2. 点 $(-2, 4)$ の直線 $y = x$ に関する対称点を求めよ。
Q3. 点 $(1, 2)$ の直線 $y = -x$ に関する対称点を求めよ。
Q4. 点 $\mathrm{P}(4, 3)$ の直線 $x - y + 1 = 0$ に関する対称点を求めよ。
Q5. 点 $\mathrm{A}(0, 4)$ と点 $\mathrm{B}(6, 2)$ を結ぶ折れ線が $x$ 軸上の点 $\mathrm{P}$ を経由するとき、$\mathrm{AP} + \mathrm{PB}$ の最小値を求めよ。
次の各点の、指定された直線に関する対称点を求めよ。
(1) 点 $(2, -3)$ の $y$ 軸に関する対称点
(2) 点 $(-1, 5)$ の原点に関する対称点
(3) 点 $(4, 1)$ の直線 $y = x$ に関する対称点
(1) $y$ 軸対称は $x$ の符号を反転:$(2, -3) \to (-2, -3)$
(2) 原点対称は両方の符号を反転:$(-1, 5) \to (1, -5)$
(3) $y = x$ 対称は $x$ と $y$ を入れ替え:$(4, 1) \to (1, 4)$
方針:問題の条件を整理し、段階的に計算を進める。
方針:問題の条件を整理し、段階的に計算を進める。